建設業界専門の転職支援を10年以上行ってきた経験から、発注者支援業務には大きな可能性があると確信しています。特に中級者の方が即戦力として活躍しやすい領域であり、適切なスキルセットを身につけることで、年収アップやキャリアアップを見込めるはずです。
一方で、「そもそも発注者支援業務とは?」「具体的にどんな流れで仕事が進むの?」「どんなスキルが求められる?」といった疑問を持つ人も多いでしょう。
この記事で解決できる悩み
・発注者支援業務で求められるスキルセットは何か?
・転職して即戦力として活躍するにはどうすればいいのか?
・発注者支援業務に必要な資格や経験は何か?
・発注者支援業務のメリットや将来性はどうなのか?
・発注者支援業務からキャリアアップする方法はあるのか?
・発注者支援業務の転職を成功させるために何をすればいいのか?
こんな悩みを解決する記事を用意しました!
本記事では、発注者支援業務の基本的な内容から具体的な仕事内容、メリットや必要となるスキルを網羅的に解説します。加えて、転職を成功させるためのステップや、現場で使える具体的なスキルセットもあわせて紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
気になる点があれば、他の記事もチェックしてみてくださいね。
1.発注者支援業務とは?

発注者支援業務とは、国土交通省や地方整備局、内閣府などの発注者が行う業務を代行・補助する業務のことです。
特に、大規模な公共工事においては、官公庁だけで対応しきれない部分を建設コンサルタント企業などがサポートする形が増えています。
ここ数年、震災復興やインフラ老朽化が深刻化する中で、「官から民へ」の流れや人員不足も相まって、発注者支援業務は拡大傾向にあります。
1-1.発注者支援業務とはどんな仕事か
発注者支援業務とはどんな仕事かを改めて整理すると、公共工事の円滑な進行をサポートする建設コンサルタント業務です。
・契約の受注:国土交通省や地方自治体、内閣府などが実施する入札に参加し、受注することで発注者支援業務を開始します。
・計画や設計、積算の補助:工事発注用の図面や数量総括表、見積資料を作成して発注用の書類を整えます。
・工事監督支援:施工業者とは別の立場で、工程管理・品質管理・安全管理のサポートを行い、必要な変更や調整のための書類作成を実施。
・公物管理補助:道路や河川、ダムなどの点検・巡視、許認可審査、維持管理の支援業務も含まれます。
・用地補償交渉:権利者とのやり取りや書類の整備を通じ、用地取得に伴う補償の承諾を得る補助を行います。
このように、発注者支援業務は施工業者と発注者の「橋渡し役」として、現場の円滑化に貢献する重要な仕事なのです。
2.発注者支援業務の主な流れと具体的仕事内容

2-1.発注者支援業務の主な作業の流れ3つ
発注者支援業務の主な作業の流れ3つとは、契約の受注、計画や設計、そして施工管理の3段階を経て進行する流れのことです。
- 官公庁や内閣府が実施する入札に参加し、落札することで正式に契約が締結されます。受注企業の技術者は「みなし公務員」として、公的立場で業務に携わります。
- 過去の実績や保有資格が重視されるため、大手企業や高い技術力を持つ建設コンサルタント会社が参加しやすいのが特徴です。
- 受注後は、公共工事の設計図面や積算資料を作成し、施工業者に提示する準備を整えます。
- 「発注者支援業務共通仕様書」や特記仕様書といった書類を作り、工事計画の内容を施工業者へわかりやすく説明できる形にまとめることが重要です。
- 実際の工事が始まったら、施工状況を確認し、発注者への報告や変更提案を行います。
- 工程や品質、安全面の監督支援を通じて、工期やコストを最適にコントロール。災害時の緊急対応や、計画変更のための書類作成などもここに含まれます。
2-2.発注者支援業務の具体的な仕事内容
発注者支援業務の具体的仕事内容としては、建設工事の発注支援、道路・河川・ダムなどの公物管理補助、そして用地補償総合技術が挙げられます。
- 発注支援の内容
- 積算技術業務:工事発注用図面の作成、工事に必要な数量やコストの算出
- 工事監督支援業務:施工業者が設計図通りに作業しているかの確認・報告
- 技術審査業務:成果物(設計・施工結果など)のチェック
- 公物管理補助の内容
- 担当箇所の巡視や許認可審査、資料作成など
- 河川や道路の維持管理、災害発生時の復旧計画補助
- 用地補償総合技術の内容
- 権利者との交渉、書類整備
- 補償金の算定や合意形成のサポート
このように、発注者支援業務は広範囲にわたる公共事業を支え、公共インフラの質と安全を守る重要なポジションと言えます。
3.発注者支援業務で求められるスキル6つ

発注者支援業務で求められるスキル6つとは、施工管理や設計に不可欠な土木施工管理技士の資格はもちろん、現場経験・コミュニケーション能力・柔軟性・正確性・CAD操作スキルなど多岐にわたるスキルのことです。
3-1.コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は、施工業者と発注者の監督職員の双方と連携をとる際に必要となるスキルです。
発注者支援業務では、直接施工業者に指示を出すことが難しい場面も多く、すべて発注者を通して調整を行わなければなりません。
そのため、現場で不備を発見した場合は、発注者に状況を正確に伝え、適切な判断や指示を引き出す必要があります。
周辺住民からのクレーム対応や書類のやり取りでも、丁寧かつ迅速なコミュニケーションが不可欠。
ちょっとした報連相の遅れが大きな問題に発展することもあるため、中級者としてチームをまとめる立場の人には特に重要なスキルです。
3-2.柔軟性
柔軟性は、想定外の事態が起こった際に機転を利かせ、臨機応変に対応できる能力のことです。
公共工事では、天候不良による工期の遅延や現場での事故、周辺住民からのクレームなど、計画通りに進まない要因が多々あります。
そのたびに作業計画を見直し、代替案を提案するなどの柔軟性が発注者支援業務では求められます。
たとえば「現場で道路が崩落しそう」という緊急事態が起きたら、すぐに発注者と相談し、応急処置や通行規制の案を示すなど、迅速かつ臨機応変な対応が求められるわけです。
こうした場面での行動力と責任感が高い人は、即戦力として重宝されます。
3-3.正確性
正確性は、成果物や工程管理などをミスなく進め、公共工事の品質を担保するために欠かせないスキルです。
公共工事は「税金」が使われる重要な事業であり、設計図通りの成果物を納品する義務があります。
節目ごとの点検や数量確認が甘いと、後々大きな手戻りやコスト増につながるリスクが非常に高いです。
発注者支援業務では、品質検査や書類の整合性チェックなどで細かい部分まで正確に確認しなくてはなりません。
ミスがあれば発注者に報告し、施工業者と連携して是正を促す必要も出てきます。こうした場面での「見逃しをしない丁寧さ」や「小さな異変に気づく鋭い目」が評価されるでしょう。
3-4.土木施工管理の経験
土木施工管理の経験は、現場での施工管理やプロジェクト管理を実務として経験してきたことを指します。
発注者支援業務と土木施工管理の仕事内容は多くの部分で共通しています。たとえば、工程管理や品質管理、コスト管理など、実際の現場を動かすための基本スキルはどちらも欠かせません。
もし土木施工管理の経験が豊富な中級者であれば、プロジェクト全体をイメージしながら発注者と施工業者の間に立つことができるため、より高い付加価値を提供できます。

実際に現場経験がある人は、書類上だけではわからない「現場特有の課題」にも柔軟に対応できる即戦力として重宝されるよ!
3-5.土木施工管理技士の資格
土木施工管理技士の資格とは、1級と2級が存在し、建設現場での監理技術者や主任技術者として認められる国家資格です。
建設業法では、一定規模以上の工事を行う際に有資格者を配置することが求められます。発注者支援業務でも、二級土木施工管理技士を持っているだけで企業からの評価が上がり、採用のハードルが大きく下がるのが実情です。
さらに上位資格の1級を取得できれば、より高度な現場で即戦力として活躍できるだけでなく、将来的に転職やキャリアアップを目指す際にも大きなアドバンテージとなるでしょう。



「どうせ取るなら1級」と考える人も多いですが、最初は2級からスタートして実績を積むのも十分アリです。
3-6.CADソフトの操作スキル
CADソフトの操作スキルは、建設や土木の設計図・施工図を作成・修正するためのソフトウェア操作能力です。
現在の建設工事で使用される設計図は、ほぼすべてがCADソフトによって作成されています。従来は設計士やオペレーターが担当する部分でしたが、発注者支援業務の中では「ちょっとした図面変更なら自分で修正してしまう」というケースも多いです。そのため、基本的な操作を身につけておけば作業効率が飛躍的に上がり、チーム全体の時間短縮やコスト削減にもつながります。



特に大規模プロジェクトでは、細かい変更が頻繁に発生するため、CADスキルを持つ人材は重宝される傾向があるよ!
4.【中級者向け】発注者支援業務で即戦力となるための5つの追加スキル


ここでは、さらに中級者の方が転職でより即戦力として活躍するため、前項に加えて押さえておきたい5つの追加のスキルセットをまとめます。先ほどの6つの基本スキルと組み合わせることで、あなたの市場価値はグッと高まるはずです。
4-1.工程管理能力
工程管理能力とは、複数の工程をオーケストラのように指揮し、遅延なく進めるスキルのことです。
- 例えば、「地盤改良→基礎工事→躯体工事」と段階的に進む工事を、全体のスケジュールと照らし合わせて管理するのがポイントです。
4-2.品質管理能力
品質管理能力とは、設計図通りの品質を確保し、問題があれば即座に是正策を講じるスキルのことです。
- 料理の味見に例えられるように、こまめなチェックと修正が重要になります。
4-3.報告書作成スキル
報告書作成スキルとは、進捗や問題点をドキュメンタリー編集のように整理し、発注者や上司にわかりやすく伝える力のことです。
- 写真や図を活用し、要点を端的にまとめると合意形成がスムーズに進みます。
4-4.調整力・交渉力
調整力・交渉力とは、発注者と施工業者、周辺住民との間で意見対立を解消し、プロジェクトを円滑化するスキルのことです。
- データや根拠を示して合意を得る「優秀な通訳者」になるイメージが重要です。
4-5.ITツール活用能力
ITツール活用能力とは、ExcelやCAD、クラウドサービスなどを使いこなし、業務効率を高めるスキルのことです。
- 大量の資料やデータを自動化したり、離れた現場同士で情報を共有する際に役立ちます。
5.発注者支援業務のメリットとキャリアアップの可能性


5-1.発注者支援業務のメリット
発注者支援業務のメリットとは、公共工事ならではの大規模プロジェクトに関わる経験を得られたり、視野が広がったりする点です。
- 多くの案件に関われる:公共工事は地方整備局や大手ゼネコンも絡む大規模案件が多く、幅広い分野の技術を学べます。
- 視野が広がる:発注者と施工業者の両方の立場を理解できるため、現場リーダーやプロジェクトマネジメントに必要な俯瞰的視点が身に付きます。
- 安定した働き方:みなし公務員として派遣されることも多く、平日勤務や残業が少ないケースもあります。ワークライフバランスを重視する人には魅力的です。
5-2.キャリアアップの可能性
発注者支援業務で得た知識や経験は、即戦力人材としてさまざまなキャリアパスを切り開く可能性があります。
- 大手コンサルタント会社へ転職:公共工事の実績を武器に、さらに規模の大きな案件や海外プロジェクトを手掛けられる可能性が高まります。
- ゼネコンや設計事務所での管理職ポジション:技術力とマネジメント力を兼ね備えた人材として、プロジェクトリーダーや部門長候補など責任ある立場に就きやすくなります。
- 独立・起業:豊富なネットワークと実務経験を活かしてフリーランスや起業という道も拓けます。
6.まとめ|発注者支援業務で中級者が即戦力になるために必要な行動


6-1.この記事のまとめ
発注者支援業務の基本から、具体的な仕事内容、メリット、必要なスキルセットを総合的に理解し、中級者が転職で即戦力となるためのポイントを押さえることです。
- 発注者支援業務とは:官公庁の公共工事を支援・補助する建設コンサルタント業務。震災復興やインフラ老朽化対策で需要が拡大中。
- 仕事内容と流れ:入札受注→計画・設計→施工管理の3ステップで、用地補償や公物管理補助など多彩な業務に携われる。
- 求められるスキルセット:コミュニケーション、柔軟性、正確性、土木施工管理経験、土木施工管理技士資格、CADスキル、さらに工程管理や品質管理など5つの追加スキルがあると強みになる。
- メリット:大規模プロジェクトに参加でき、視野が広がり、キャリアアップの可能性が高い
6-2.次に取るべきステップ
次に取るべきステップとしては、まず自己診断を行い、資格取得や実務経験で不足している部分を補っていきましょう。
具体的な行動としておすすめは以下の通りです。
- 資格取得:二級土木施工管理技士を目指し、学習計画を立てる。過去問やテキストを使って効率的に勉強する。
- 転職サイト・エージェントの活用:発注者支援業務の求人を探すなら建設専門の転職サイト・専門エージェントを併用して、自分に合う条件を洗い出す。
- スキルアップ講座の受講:通信教育講座などでCADやコミュニケーション研修を受けてスキルを磨き、実務で積極的にアウトプットする。
6-3.筆者からのメッセージ
筆者からのメッセージとは、私自身の転職成功経験や長年の業界知識から、中級者が発注者支援業務で即戦力として飛躍する可能性を後押ししたい気持ちです。
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